さて、どうしたものでしょう。
里の寄り合いへ出席する霊夢さんを見送ったのが朝の事。
お掃除を一人で終えて、お昼にラーメンを食べたのがちょっと前。
トイレで用を足して、出ようとした瞬間ドアノブがもげて閉じ込められたのがついさっき。
窓から脱出しようとして、自慢の大きなコマミミが窓のさくに引っかかって、外に宙釣りになってるのが今です。
ああ、情けない。
自慢のコマミミはいくらもがいても、どの向きに飛んでみても、外れてくれる気配はありません。
表の方で、にぎやかな声が聞こえます。
この声は神社によく来る妖精や妖怪の小さいやつです。
妖精たちに見つかるのは時間の問題でしょう。
きっと妖精たちはあうんを助けたりはせず、棒でつついたりして面白がるだけに決まっています。
ああ、情けない。
今度は目の前の木の陰で何かが光って、そこから黒い影が勢いよく飛び出して空に消えていきました。
今日の夕刊の見出しは、さしずめ「博麗の狛犬 トイレにつまる」といった所でしょうか。
ああ、情けない。
霊夢さんの出席した寄り合いは夕方まで。
霊夢さんはきっと里にばらまかれた夕刊と共に帰って来ることでしょう。
どんな顔をして、どんな勢いで、どんな声で……
ああ、情けない。
ああ、恐ろしい。
もうこのまま、トイレを護る狛犬として石になりたい。
あうんはもうそれ以上考えるのをやめて、万物の理に、静かに身を委ねる事にしました。
まるで、そこ(トイレ)から動く事のない、ただ1つのさざれ石かのように。
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