桜はもうとっくに青々としているのに、今朝は久しぶりに吐く息が白くなり、お昼になっても神社のしょうじを風が冷たく鳴らしました。
日課の朝のお掃除を終えてからは、あうんも霊夢さんもこたつにこもりっきり。
昨日まではこたつをしまう気まんまんだったのに、これではとてもそんな事をする気にはなれません。
しまいそこねたこたつには、湯呑みが二つ。季節柄、みかんが無いのは何だか味気ないですが、こうやって寒い日に霊夢さんとこたつで温まりながら飲む熱いお茶は、やっぱりとてもおいしいです。
「熱いお茶がおいしいのは、今日が最後みたいね」
読み終えた新聞を放りながら霊夢さんがそんな事を言うもんだから、あうんは何だか寒いのが名残惜しくなって、湯呑みから上がる湯気がいっそう愛おしく感じてなりません。
霊夢さんは続けてため息をついて、カタカタとなり続けるしょうじ窓をじっと見つめました。
その表情は何だか物悲しそうな、それでいて優しいような、複雑なものでした。
あうんにはそれが、霊夢さんが寒い季節に、ありがとうや、さようならを言っているように見えました。
霊夢さんもあうんも、同じ事を感じてたんだと思います。
「霊夢さん、今晩は春野菜を使ったお鍋にしませんか?」
きっとあうん達と同じように名残惜しくて、ひょっこりと顔を出したんだろう季節へ贈る手向けの花として、最後に温かいお鍋を。
霊夢さんのいいわねという返事を聞いてから、あうんは冷蔵庫の中身を頭の中で確認するのでした。
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